映画『遊星よりの物体X:THE THING FROM ANOTHER WORLD』の見どころと感想

SF

『遊星よりの物体X ― THE THING FROM ANOTHER WORLD』はアラスカの極寒で閉鎖された基地内での、異星人との戦いを描いた1951年公開のアメリカ映画。

原作は1938年のジョン・W・キャンベルによる短編SF小説『影が行く ― WHO GOES THERE ?』。

1982年にジョン・カーペンター監督により制作されたリメイク作品『遊星からの物体X ― John Carpenter’s THE THING』が公開され話題を呼びました。

★作品情報

監督:クリスチャン・ナイビイ
脚本:チャールズ・レデラー
原作:ジョン・W・キャンベルJr.『影が行く:WHO GOES THERE ?』
製作:ハワード・ホークス
音楽:ディミトリ・ティオムキン
公開:1951年
上映時間:87分
製作国:アメリカ合衆国

★キャスト

ニッキ:マーガレット・シェリダン
パトリック・ヘンドリー大尉:ケネス・トビー
キャリントン博士:ロバート・コーンスウェイト
スコッティ:ダグラス・スペンサー
エディ・ダイクス中尉:ジェームス・ヤング
クルーのチーフ:デウェイ・マーチン
ケン・エリクソン伍長:ロバート・ニコルス
バーンズ伍長:ウィリアム・セルフ
スターン博士:エドワード・フランツ
チャップマン夫人:サリー・クレイトン
“The Thing”:ジェームス・アーネス

『遊星よりの物体X』のあらすじ

アラスカ州アンカレッジにある将校クラブで仲間とくつろぐヘンドリー大尉に司令部から呼び出しがあるところから物語が始まります。

その内容とは、アラスカの広大な雪原の真ん中にあるアメリカ軍の研究施設で調査研究をおこなっているキャリントン博士から、近くに未知の飛行物体が墜落したという連絡でした。

早速、ヘンドリー大尉は部下、装備と共に墜落現場へ向かい、そこで氷に埋もれた円盤型の飛行物体と乗組員らしき身長2.5mの異星人—The Thingを発見します。

円盤は掘り起こす際の爆発で粉々に破壊されてしまいますが、異星人は氷ごと切り出され研究施設に持ち帰りますが、見張りの隊員の不手際で氷を溶かしてしまい。異星人が蘇生してしまいます。

異星人は逃走するものの、犬ぞり用の犬たちに襲われ腕を噛みちぎられてしまいます。その腕を調べたところ、その異星人の驚くべき正体が判明します。

そして、その異星人を脅威と考え撃退しようとするヘンドリー大尉と異星人を研究対象として保護し、交流を試みようとする科学者のキャリントン博士の間に確執を生じさせます。

『遊星よりの物体X』の見どころ

未知のものに対しての畏れ

この映画の見どころの一つは、未知の生物がわれわれの社会に侵入してくることへの恐怖があります。

明らかにわれわれよりも優れたテクノロジーで作られた乗り物に乗って、宇宙のどこともわからない惑星から優れた知能を持った生物がやってくるのです。そして、その生物はどのような生態を持っているのか、どのような思考をするのかもわからないのです。

この映画でも、舞台となるアラスカにあるアメリカ軍の研究施設で、軍人であるヘンドリー大尉と研究のリーダーである科学者のキャリントン博士の間で未知の生物に対する扱いで対立が起こります。

ヘンドリー大尉とキャリントン博士の確執

研究施設へ運び込まれた異星人は氷が溶けて蘇生します。そして逃亡し、その際に犬たちに襲われ腕を噛みちぎられてしまいます。しかし、その腕からその生物について色々なことがわかってきます。そしてそれがいずれ人類の脅威になるかもしれないということもわかってきます。

それを知ったヘンドリー大尉と部下たちはそれを脅威と考え、部下や職員を守るために異星人を撃退しようとしますが、それに対してキャリントン博士は反対します。

キャリントン博士は異星人は知性があり人類と交流できると考えるのです。そこで博士はどのような行動に出るのでしょうか。また、ヘンドリー大尉たちは異星人をどのように撃退するのか、それも見どころです。

閉鎖された環境での恐怖

この映画の舞台はアラスカ。極寒の地であり見渡す限りの雪原なのです。逃げ出すことのできない小さなアメリカ軍の研究所に未知の凶悪だが知能の高い生物が入り込んでくるのです。この閉鎖された環境で、生きるか死ぬかの攻防が繰り広げられます。

閉鎖された環境での未知の生物との攻防といえば、今となってはよくあるシチュエーションですが、代表的なのはリドリー・スコット監督の『エイリアン』でしょう。でも、この映画は1951年の映画であって、時代を考えるとなかなか画期的な内容だったのではないでしょうか。

原作とジョン・カーペンター『遊星からの物体X』

この映画には原作があります。アメリカの小説家ジョン・W・キャンゲルが1938年に発表した『影が行く(原題:Who gose there?)』です。

また、1982年にジョン・カーペンター監督によって本作のリメーク作品が公開されています。タイトルは『遊星からの物体X』。「より」が「から」に変わっています。原題は『John Carpenter’s The Thing』。1951年版のタイトルから「from another world」がなくなっています。

ちなみに、ジョン・カーペンター監督がSF作品を多く製作していますが、そのきっかけは子供の頃『遊星よりの物体X』を見て感動したのがきっかけという話があるようです。

原作と本作、カーペンター版を比べた場合、本作よりもカーペンター版の方が原作に近いのがわかります。舞台が南極になっていること登場人物の名前、未知の生物の生態などがだいぶ脚色が加わっているものの原作に近い設定になっています。

原作が発表されたのが1938年(昭和13年)ということで、今から85年以上も前の作品ということになるのですが、時代を感じさせない斬新な内容となっています。

本作が制作されたのは原作の13年後ということなのですが、内容がだいぶ簡略化されている印象があります。しかし、1950年ごろの作品であることを考えると、記述的な問題や予算の問題もあるのでしょうが、それを割り引いてみれば、なかなか見応えのある作品になっているのではないでしょうか。

『遊星よりの物体X』の感想

本作『遊星よりの物体X』をこれから鑑賞される方は、おそらくカーペンター版『遊星からの物体X』を既に見ている方が多いのではないかと思います。

1982年のジョン・カーペンター監督の『遊星からの物体X』はもう40年以上も前の作品になるのですが、今でもSFホラーの名作として色褪せることなく人気のある作品です。本作とは時代の違いもあり、比べて見ること自体あまり意味のあることではないでしょう。

本作が製作されたのは第二次世界大戦が終結して5年ほどの時代ですが、ソ連初の核実験も既に成功しており冷戦の時代に突入しています。1947年にはケネス・アーノルドの空飛ぶ円盤事件、ロズウェルのUFO墜落事件があり、そのような時代背景もあってのこの映画の製作ではないのかなとも思います。

モノクロ作品でもあり、何となくフランケンシュタインの怪物がボディスーツを着たような異星人や無塗装の銀色に輝く双発のプロペラ輸送機、アメリカの俳優たちの今とは違う演技や喋り方など、5、60年当時のSF映画独特の雰囲気の味わえる作品のように思いました。

ジョン・カーペンター監督の『遊星からの物体X』には及ばないものの、当時のSF映画としてはなかなかの名作ではないかと思います。色々な意味で一見の価値ありの作品です。

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