映画『チャーリーとチョコレート工場:CHARLIE AND THE CHOCOLATE FACTORY』の見どころと考察、感想

ファンタジー

児童小説のベストセラー、ロアルド・ダール著『チョコレート工場の秘密』をティム・バートン監督が独特の映像美で映画化。主演はジョニー・デップ。監督とは『スリーピー・ホロウ』以来のタッグ。
この映画では、ティム・バートン監督のちょっとダークなユーモアも交え、絵本をそのまま実写化したような独特なファンタジーの世界が広がっています。

作品情報

公開:2005年
上映時間:115分
監督:ティム・バートン
原作:ロアルド・ダール『チョコレート工場の秘密』
配給:ワーナー・ブラザース

キャスト

ウィリー・ウォンカ:ジョニー・デップ
チャーリー・パケット:フレディ・ハイモア
チャーリーのお父さん:ノア・テイラー
チャーリーのお母さん:ヘレナ・ボナム=カーター
ジョーおじいちゃん(父方):デイビッド・ケリー
ジョゼフィーンおばあちゃん(父方):アイリーン・エッセル
ジョージおじいちゃん(母方):デイビッド・モリス
ジョージーナおばあちゃん(母方):リズ・スミス
オーガスタス・グループ:フィリップ・ウィーグラッツ
べルーカ・ソルト:ジュリア・ウィンター
バイオレット・ボーレガード:アナソフィア・ロブ

映画『チャーリーとチョコレート工場』のあらすじ

この物語の主人公は、どこにでもいそうな普通の少年チャーリー・バケット。人一倍家族思いのやさしい少年。でも家は食べるものにも困るほど貧乏。

チャーリーの住む街には憧れのチョコレート工場がある。ある日、工場の経営者ウィリー・ウォンカから大発表が。チョコレートの中に入っている『ゴールデンチケット』を引き当てた子供たちをチョコレート工場にご招待!でも、入っているチケットはたった5枚だけ。そして、その中の一人だけに、あっと驚く『特別賞』も用意されているという。

一人、二人と当選者が発表されていき、チャーリーは気が気ではありません。
そして残りはあと一人。貧乏なチャーリーは諦めかけるのですが、ジョーおじいちゃんの協力や幸運な出来事もあって、ついにゴールデンチケットを手に入れることができます。

そしてついに憧れのチョコレート工場へ。
果たして工場の中はどうなっているのでしょうか。ウィリー・ウォンカとはどのような人物なのでしょうか。チャーリーの胸は高鳴ります。
でも、なぜウィリー・ウォンカは5人の子供たちを招待したのでしょうか。

映画『チャーリーとチョコレート工場』の見どころ

ドキドキ、ハラハラ!物語の展開

この映画には原作があります。ロアルド・ダール著『チョコレート工場の秘密:Charlie and the chocolate factory』です。そして、1971年に『夢のチョコレート工場:Willy Wonka and the chocolate factory』のタイトルで映画化もされています。

世界一の謎のチョコレート工場の経営者ウィリー・ウォンカは、チョコレートにたった5枚だけ『金のチケット』入れます。その『ゴールデンチケット』当てた、5人の子供だけを工場に招待するというのです。それには一体どういう目的があるのでしょうか。また、チャーリーはどのようにチケットを手に入れるのでしょうか。

工場の中に入ってからは、子供たちに色々なトラブルが起こってきます。展開が目まぐるしく、目を離せなくなってしまいます。

チャーリーの家族愛とウィリー・ウォンカ

チャーリーの一家はとても貧乏で、その日の食事にも困っています。でもチャーリーは、人一倍家族思いのやさしい少年です。何よりも家族を大切に考えるのです。

そのようなチャーリーに対して、ウィリー・ウォンカは世界一の工場を経営する大金持ちなのですが、家族の愛情を知らずに育っています。チャーリーの家族愛が、どのようにウィリー・ウォンカに伝わるのでしょう。

ティム・バートン監督の描く世界観

まず冒頭から、雪が降りしきる中、アールデコ形式の重厚感あふれる巨大な工場が登場します。スクリーン全体に、寒々とした暗いグレーの世界が広がり、そしてチャーリーの家が登場します。それはウォンカの工場とは対照的に描かれています。

街外れの、一見『空き地?』と思われるようなガレキが散らばっている荒れた土地に、ポツンと立っていて、孤立感があります。チャーリーの家は、小さな家なのですが、全体的に傾き、屋根はひしゃげ、真ん中が凹んで、穴も開いています。おまけに煙突まで曲がっており、チャーリーの家の貧乏さをこれでもかと言わんばかりに表現しています。ちょうど、グリム童話などに出てくる、森の中の魔女の家のようです。

また、面白いのは工場との位置関係で、チャーリーの家の前の道路をまっすぐ行くと、正面にウォンカの工場がそびえているのです。チャーリーの家と工場の対比がとてもわかりやすく描かれています。

見どころのまとめ

ひょっとすると、前作の『夢のチョコレート工場』を見た方もおられるかもしれません。また、原作を読まれた方もおられるかもしれません。

そのような方が、この映画を見るのであれば『ティム・バートンの世界観』に注目してご覧になればいいと思います。工場やチャーリー一家をどう描いているか、そして、人々、特にウィリー・ウォンカをどう描いているかに注目してみると面白いと思います。また、内容も前作よりも濃くなっているので、その違いに注目してみるのもいいですね。

映画『チャーリーとチョコレート工場』の考察

この映画は、アニメの世界をそのまま実写化したような映画です。ティム・バートン監督は元々ディズニーでアニメーションの仕事をしていたと言います。ウォンカの巨大で重厚な工場の描き方や、チャーリーの家の、貧乏を絵に描いたような描き方などの、極端なデフォルメのしかたは、いかにもアニメの手法という感じです。その手法は工場の中の描き方でも随所に見られます。

結末はハッピーエンド

この映画は冒頭に「チャーリーは最後には幸せをつかむが、彼はまだそれを知らない」というナレーションが入ります。ということは、最終的にハッピーエンドになると最初からわかっている物語なのです。でも見ているとそんなことは忘れて、物語に没頭してしまいます。

これをネタバレと言っていいのかはわかりませんが、最初に結末の状況を知らせるという手法は昔からあります。不幸な終わり方をしないことがわかっている映画は、安心して見られるというメリットがあります。その分、物語の中で起こるいろいろな出来事や工場内の仕掛けをより楽しめるのではないでしょうか。

ウィリー・ウォンカとはどんな人物?

天才的なショコラティエ&企業家

ウィリー・ウォンカはショコラティエとしても実業家としても天才的です。斬新なアイデアで、次々と魔法のような新しいチョコレートやお菓子を作り出します。企業家としても、世界一のチョコレート会社を自ら作り成功させています。

ウォンカの人間不信

でも、彼は孤独で人間に不信感を持っています。かつてのウォンカの工場は、チャーリーのジョーおじいちゃんも働いていたというように、多くの従業員がいました。でも今は、ウンパ・ルンパが働いているだけです。ウォンカは人間を信用していないのです。それは、かつて同業者の送り込んだスパイによって、ウォンカの考えたレシピを盗まれたというところに原因があります。

ウォンカの心のトラウマ

ウォンカは家族に恵まれていません。厳格でとても厳しい歯科医の父親に育てられています。この映画ではウォンカの子供の頃の思い出が、フラッシュバックの形で表されています。

子供の頃のウォンカは、常に歯列矯正のためのヘッドギアをつけた、歯を剥き出しの状態で登場しています。これは笑えるシーンではあるのですが、父親の権威の象徴のように感じます。父親に逆らえないウォンカの心理がよく現れているように思います。ハロウィーンのお菓子も黙って燃やされています。

父親からの独立

そのようなウォンカに変化が起こるのが、燃え残りの中からチョコレートを見つけて、こっそりと食べるシーンです。このシーンは、ウィリー・ウォンカに家族以上の存在があるということを気づかせます。ちょっとしたシーンに見えるのですが、ラストにつながる重要なシーンではないでしょうか。

これをきっかけにウォンカはチョコレートにのめり込み、父親の元を離れることになります。

母親を省略することでウォンカの親子関係をわかりやすく

この物語にはウィリー・ウォンカの母親が出てきません。母親がいない理由も述べられていませんし、母親の存在すら感じさせません。

これは、ウィリー・ウォンカの家族関係やトラウマの問題を単純化するためではないかと考えます。母親を含めた親子関係よりも、『厳格な父親とその息子』というふうに家族関係を単純化した方が見る側にとっても、わかりやすくなるからなのではないでしょうか。

この映画の特徴はシンボル化された表現

この映画は、世界最大のチョコレート工場の経営者で大富豪だが、家族のことなど全く頭になかったウィリー・ウォンカが、日々の食事にも困るほど貧乏だが、誰よりも家族思いのチャーリー・バケットを通して、家族の大切さを知るという物語で、この二人を中心に話が進んでいきます。そして、それはとても単純化された設定になっているように思います。

まとめ

この映画は、ウォンカの巨大で重厚感あふれる工場と対照的なチャーリーの家の貧弱さ。そして、チャーリーの家庭の貧しさの表現のしかた。一貫して歯列矯正のヘッドギアをつけ歯を剥き出した状態で登場するウォンカの子供時代。母親の存在を完全に消し去った家庭環境など。

この映画では主役二人をそのように、とても単純化したシンボリックな表現方法で描くことにより、それが、より誇張されたコミカルさと物語の設定のわかりやすさにつながっているのではないでしょうか。

でも面白いのは、その日の食べ物にも困るようなチャーリーの家ですが、なぜかテレビはあるのですよね。

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